2011-11-23

" Fishpond " 写真展at NALUcafe

"Power spot / Power people" 写真展の作品紹介 "Fish pond"


"Fishpond" Fish pond in Molokai

先人から受け継いだ叡智と財産を大切に次世代へ渡す。そんな場所です。

わかんねーよ!
では説明しますね。
ここはハワイのモロカイ島。どんなガイドブックにもないがしろにされている島。モロカイ島について書かれているページは多くて2分の1ページ。ほとんどのハワイ諸島のガイドブックはオアフ、マウイ、カウアイ、ビックアイランド、ラナイくらいまで載っていますが、モロカイ島はほとんど載っていないですね。オアフから飛行機で20分、70ドルで行けるのに。なぜ、そんな所になんでいったかといいますと、プロオーシャンアスリートの荒木汰久治が毎年、モロカイ島からオアフ島までの約60kmをわたるアウトリガーカヌーレースに出てるから。www.arakitakuji.com

ちょうど3月バリに向かう飛行機を成田で待っているとき、汰久治さんから電話があり「育三さん!来月モロカイレースあるから、一緒にいって写真撮って下さい!」と。もちろんオッケーです。「人間力」の固まりのような汰久治さんと、モロカイに行ける。彼の仲間たちに会える。これはかけがえのない経験になると一瞬で思う。が、さすがに仕事のスケジュールをどうしようか。2月にパプアニューギニアにいって3月にバリ、5月にアメリカロードトリップ、と思いっきり日本を留守にしてるので仕事がたまっています。でも行きたい。行きました。
ちょうど5月にオープン予定の銀座のKUROBEの黒部さんにお願いして、工期をちょっとずらしてもらい、(ありがとうございます!)他のクライアントの方にもお願いして理解してもらって。ほんとに周りのひとたちに恵まれて幸せです。

そして、椰子の木より高い建物がない、ハワイ諸島最後の楽園、モロカイに上陸。ポリネシア文化が根強く生きている島。飛行機を降りると汰久治さんと一緒にホクレア号に乗っていたメルがさっそく迎えてくれる。いきなりモロカイ島のドンに会ってしまいます。やっぱり静かな迫力のある、ものすごく優しい顔をした本物だな、と空港ですでに感動。
それからモロカイ島をメルや汰久治さんに案内されていろいろな歴史、島の文化を紹介してもらいました。もちろん写真も沢山撮る。

フィッシュポンド。島のひとたちが800年以上も前から、漁につかっている、自然の湾の形を利用して、石を積み重ね
作った人工の池。島のひとたちが過不足なく食べて行けるよう27個のフィッシュポンドがあるそうです。写真を撮りながらであったフィッシュポンドの管理人Hannoは誇らしげに言ってました、
「俺らは、必要なときに、必要なものを、必要なだけ獲る」。
「先人たちが何百年後の子孫のことも考えて作ってきてくれた物を俺も次の世代のためにメンテナンスしてる。いい仕事だろ?」と。獲れるだけ獲って他の島にも売りに行こう!とか思わないように、きちんと必要な分が獲れるだけのフィッシュポンドの数。そして、漁だけではなく養殖にもつかわれてきちんと長期的視点でサイクルも考えている。この2点だけでも先祖から受け継いだ財産がすごく叡智の詰まったものだと思います。そして、フィッシュポンドをつくるために運ばれてきてる石は山の上から運ばれた岩。自然の力をねじ伏せてつくる物ではなく、潮の満ち引きなど自然の力と共に作るもの。
だから、先人から受け継いだ叡智と財産を大切に次世代へ渡す。そんな場所。

そして、そこで沢山の写真を撮りました。フィッシュポンドやそれを管理してるHannoさんとか。
が、帰国して、現像してみると、どうもフィッシュポンドの写真が納得いくものが撮れていません。びっくり。フィッシュポンドの写真だけがすべて納得がいきません。被写体になにか遠慮してるというか、そんなかんじでした。
やっぱりもう一度行くしかない、と。
今度は9月に行ってきました。4月に行って写真に撮った人に写真をわたし、展覧会で使用することを伝え了承を得るためもありますが、やはりもう一度フィッシュポンドを撮りたい。そんな思いで。
ぼくは旅先で会った人の写真を撮って、帰国してプリントして、その人に渡す(か、送る)。そこで作品が完成すると思っています。9月に再度行ったときも、メルやエディー、彼らの友人たちに写真を渡す事ができました。Hannoだけは、行ったときに留守で会えなかったので、そこにいた友人の人に渡すようにお願いしましたが。

そんなわけで、9月。フィッシュポンド巡りをしながら写真を撮っていました。気に入ったフィッシュポンドを見つけ、写真を撮っていたら、すぐそばに管理人の小屋があったので、一言声をかけてもう少し近くから撮らせてもらおうと、呼んでみたら、出てきました、前歯が一本ぬけたごっつい、おおきい、怖そうなポリネシアンが不機嫌そうに。
しょうがないので、フィッシュポンドの写真を撮りたいから撮らせてくれないか?頼んでみたら。「なんで?」
「あなたたちの先人の知恵が詰まったフィシュポンドを写真に撮り、自分の国にその叡智を紹介したいから」みたいなことを伝えると、もう満面の笑顔になって「いいよいいよ、なにやってもいいよ」と。まあ座って一緒に食べようと、昨日ハントした鹿の肉をごちそうしてくれました。それがToni。Toniの写真もいいのが撮れたので、今度の展覧会の時に展示しようと思います。Toniの息子がKamakaniといって、まだ若い青年。彼が日々のフィッシュポンドの管理をしているらしいです。Kamakaniにお願いして、フィッシュポンドの中に入ってそこから、ゲートを撮影しました。それがこの写真です。潮の満ち引きでここから魚が入ったり出たり、幼魚は自由にではいりできて、成体するとでれなくなったり、そんな絶妙な加減がこのゲートに詰まっているらしいです。800年前の人が作ったものが現代でも受け継がれ機能している。
そんな先人のパワーを感じる場所。